デザインを業務委託する際のポイント
デザインを外注(業務委託)する際、気をつけたいポイントがいくつかあります。
陥りがちなトラブルごとに、対処のコツをご紹介します。
トラブル例(1) 意図にそぐわないデザインが上がってくる
主に、以下の原因が考えられます。
①デザイナーがニーズを誤解をしたまま「わかったつもり」になっている
②クライアントの説明が不十分である
③デザイナーが、ニーズよりも自分のセンスを重視している
④デザイナーのデザイン能力を超えている
①と②は表裏の関係で、非常によくあることです。デザインのニーズを口頭や文章で説明するのは難しい上、デザイナーがどのように理解したかを確認するのは困難だからです。こうしたトラブルを回避するためには、発注者側が次のことを心掛けることが大切です。または、編集者などに介入してもらいましょう。
対策
●言葉の表現を変えて、同じことを何度も説明する
●「なぜこうしたいか」の理由も説明する
●予想されるNGのデザインを先に言っておく
●イメージに近い参考デザインを提示する
●打ち合わせ時にデザイン例を尋ね、デザイナーからの回答にズレがあれば修正する
●クライアントとデザイナーの間に編集者を置く
③と④については、そのデザイナーの特性ですので、それを承知で依頼するか、別のデザイナーに変更するしかないと思われます。
トラブル例(2) 修正の回数が多く、指示する手間がかかる
修正回数が多い原因は、クライアント側にある場合と、デザイナー側にある場合とがあります。もし、その原因がデザイナー側にある場合は、以下の背景が考えられます。
①デザイン会社の社内で修正後の見直し作業が行われていない
②クライアントの要求スケジュールが厳しく、見直す時間がない
③クライアントによる修正指示が正しく伝わっていない
①のケースは非常に多く見受けられます。なぜ見直し作業が行われていないかというと、そのデザイン会社において見直し作業が軽視されているからです。ただ、もしそれが②と関係するのであれば、発注者側にも改善の余地があると言えます。
③のケースは、「赤字が乱雑または小さくて読みにくい」「指示があいまい」「デザイン会社の作業担当者が勘違いをした」などの理由が考えられます。
対策
●作業担当者以外の人が見直しをするよう、デザイン会社に要求する
●無理のないスケジュールで進行できるよう調整する
●赤字は大きくていねいに書く
●紙と口頭の両方で指示をする
●あいまいな指示・要望は避け、明確に伝える
デザイン会社内の見直し状況に改善が見られない場合は、制作の段取りや発注先を考え直すことも視野に入れましょう。
トラブル例(3) スケジュールが遅れがちになる
広報誌・会員誌・機関誌などの制作過程において、スケジュールが遅れがちになるのは、よくあることです。おそらく、遅れがちにならない冊子はほとんどないでしょう。なぜなら、原稿執筆の締切が守られず、デザイン発注する段階ですでに遅れていることが多いからです。
ただ、大事なのは、たとえ途中でスケジュールが遅れてしまったとしても、それを取り戻し、最終納期に間に合わせることです。そのためには、状況に合わせて段取りを組み直すとともに、制作関係者の協力をあおぐことが大切です。
対策
●スケジュール作成の当初は余裕をもったスケジュールにする
●工程ごとの締切(原稿締切、初稿締切、校正締切など)を設定する
●遅れがちな執筆者などには前倒しの締切を伝える
●スケジュールを管理し、段取りを組み直せる現場担当者(できれば編集者)を置く
●優先して素早く作業してくれるデザイナーを確保し、大切にする
トラブル例(4) デザインを依頼する準備に時間がかかる
デザイン依頼のためにどのような作業をしているかによって、大きく時間短縮できる可能性があります。具体的な作業としては、次のものが推測されます。
①ワードなどの生原稿をチェック・修正する
②レイアウトイメージに合わせてワードに写真や図版を貼りつける
③レイアウトを考えてラフイメージを手描きする
④写真に合番をふったりフォルダを分けたりして、データを整理する
上記のうち、④だけは発注者側が準備すべき作業で、省くことができません。なぜなら、「どの原稿とどの写真が対応するのか」について、発注者側が教えてあげないと、デザイン会社にはわかり得ないからです。ただし、①~③については時短の改善の余地が十分にあります。
対策
●生原稿のチェックは内容に関するものに留め、文法の修正や表記統一、校正はライターや編集者に外部委託する
●ワードでレイアウトイメージを組まずに、どのあたりにどの写真・図版が入るかだけを指示する
(デザインはワードとは異なるソフトで行うため、ワードでレイアウトしても意味がありません)
●こだわりのある記事以外はレイアウトをデザイナーに任せる
もっとも、上記の対策が効果的かどうかは、デザイン会社によって異なります。一般的には、クライアントの意図を汲んでくれる編集者が存在する会社が望ましいかと思います。
トラブル例(5) デザインのセンス・工夫が感じられない
これについてはさまざまな状況が想定されるため、一概には言えません。もしかすると、コミュニケーション上の問題かもしれませんし、デザイナーの能力の問題かもしれませんし、デザインに対する評価の問題かもしれません。このトラブルを避けるために、発注者側としてできる主な対策は次のようになります。
対策
●抽象的な表現を避け、なるべく具体期に指示をする
●「なぜこうしたいか」の理由も説明する
●予想されるNGのデザインを先に言っておく
●イメージに近い参考デザインを提示する
●ラフ(構成案)をどの程度変更していいかを説明する
●複数案のデザインを作成してもらう
トラブル例(6) アドバイスや指摘をしてくれない
デザイナーにもさまざまなタイプの人がいますので、アドバイスや指摘をしてくれない人もいるでしょう。むしろ、そうした人の方が多いかもしれません。なぜなら、デザイナーの役割は一般的に、「与えられたニーズ・条件・情報・素材を元に、よりよいデザインを形にする」ことだと捉えられているからです。「与えられたニーズ・条件・情報・素材」に疑問を感じてアドバイスや指摘をするのは、編集者やディレクターなどの役割となります。
対策
●よりよいデザイナーを探す
●クライアントとデザイナーの間に編集者を置く
●アドバイスや指摘には予算がかかることを認識する
トラブル例(7) 精算時に修正費を追加される
印刷会社のデザイン部門に比較的よく発生するようです。ただ、「制作途中で要望が変わった場合」や「当初の想定よりも修正回数や修正量が増えた場合」などは、修正費の追加は正当な要求かもしれません。むしろ、修正費を追加されないのはデザイン会社の好意によるケースが多いと言えるでしょう。外注会社の特性を確認した上で、事前に話し合うことが大切だと思われます。
対策
●修正に関する見積条件を事前に書面で明確にしておく
●見積条件以上の修正が発生した時に、料金の再確認をする
●デザイン会社と望ましい信頼関係を構築する